「売上は好調なのに、なぜか資金繰りが苦しい」—この矛盾した状況に陥ったことはありませんか?私のクライアントの社長さんはまさにこの「黒字倒産」の崖っぷちに立たされた経験があります。
財務諸表上では利益を出しているのに、実際の銀行口座は底をつく。この恐ろしい状況から脱出するために、見直した本当に重要な会計指標についてお伝えします。
まず認識すべきは、損益計算書だけでは企業の健全性は測れないということです。売上高や営業利益率といった指標に目を奪われがちですが、実はキャッシュフロー計算書こそが企業の生命線を映し出します。
特に注目すべきは「営業キャッシュフロー」です。これが継続的にマイナスであれば、どんなに黒字決算でも危険信号です。クライアントさんは売掛金の回収サイクルが長期化し、支払いとのタイミングギャップで資金ショートの危機に直面していました。
次に重視すべきは「手元流動性比率」です。これは(現金及び現金同等物÷月間固定費)で計算され、何か月分の固定費を現金で賄えるかを示します。私は最低でも3ヶ月分の確保を心がけています。(可能であれば半年から1年くらい確保できるのが理想的です)
また意外と見落としがちなのが「売上債権回転期間」です。売掛金がいかに早く現金化されるかを示す指標で、この数値が大きいほど資金繰りが悪化します。クライアントさんは請求サイクルの見直しや早期入金特典の導入で、この数値を30日短縮することを目標としました。
損益計算書上の指標としては、「限界利益率」にも注目すべきです。売上が増えたときにどれだけ利益が増えるかを示すこの指標は、事業の収益性の本質を表します。不採算商品の整理と高利益商品への注力でこの数値を改善し、売上構成を見直しましょう。
企業経営は数字のゲームですが、すべての数字が等しく重要なわけではありません。経営者は「売上至上主義」から脱却し、本当に健全な経営を示す指標に目を向けるべきです。
実感したのは、日々の資金繰りと将来の投資余力を確保するバランス感覚の大切さです。売上や利益を追うだけでなく、キャッシュの流れを常に意識する経営こそが、真の事業継続の鍵となります。
皆さんも自社の会計指標を今一度見直してみてはいかがでしょうか。明日の資金繰りと10年後の成長、両方を見据えた経営の羅針盤となるはずです。