多くの企業経営者が「売上は伸びているのに、なぜか手元にお金が残らない」という悩みを抱えています。実はこの問題、粗利を適切に管理することで大きく改善できるのです。今回は粗利を意識することで財務体質が劇的に改善した企業の事例をご紹介します。
中小製造業のA社は、年商5億円ながら毎月の資金繰りに四苦八苦していました。受注は好調なのに、なぜか銀行残高は減少傾向。この状況を打開するため、財務コンサルタントに相談したところ、「粗利管理」の徹底を提案されました。
最初に行ったのは、全案件の粗利率の可視化です。A社では製品ごとの原価計算はしていましたが、営業担当者は売上だけを重視し、粗利率の低い大口案件を獲得することに力を注いでいました。分析の結果、売上の40%を占める大口顧客の粗利率はわずか15%、一方で小口顧客の平均粗利率は32%という実態が明らかになりました。
この結果を受け、A社は以下の改革を実施しました。
1. 全社で粗利率目標を設定し、営業評価の指標を売上から粗利額へ変更
2. 粗利率の低い案件は価格交渉を行うか、思い切って撤退
3. 経営幹部による週次での粗利進捗会議の実施
4. 高粗利商品の開発と販売強化
改革開始から半年で、A社の平均粗利率は18%から27%へと飛躍的に向上。売上は若干減少したものの、手元資金は増加に転じました。さらに粗利が増えたことで、新商品開発や設備投資の余力が生まれ、中長期的な成長基盤が整いました。
同様の成果を上げた企業に共通するのは、「売上ではなく粗利で考える文化」の定着です。特に効果的だったのは、社内での見える化と数字の共有でした。システム開発会社B社では、オフィスの壁に粗利率グラフを掲示し、全社員が日々の業務で粗利を意識できる環境を作りました。
粗利管理を徹底するポイントは、単なる数字の管理ではなく、「なぜこの仕事をするのか」という本質的な問いかけです。利益率の低い仕事を安易に受けることが、企業の体力を奪っていきます。逆に言えば、粗利を意識した判断ができるようになれば、自然と企業にお金が残る体質へと変わっていくのです。
経営者の皆様、明日からでもできることがあります。まずは全案件の粗利率を一覧化し、実態を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、企業の未来を大きく変える転機になるかもしれません。